パラドックスを楽しもう

−ケイパブルな心−

QLT読書会 小林 裕

 

 

 2003年に平塚で発足したWINE研が、今春「一般社団法人 サロン de WINE」に昇華し、Wildly Intelligent Networking Empowermentの理念を引き継いで新しい道を進み始めた。この先どのような思考の地平線が開けるのか誠に楽しみである。今では“WINEを飲む会”ではないかと間違う人はいなくなったと思うけれど、これからも想像し得ないさまざまな探求が起こるのだろうと期待に胸がはずむ。

 ところで、WINE研が最初に取り組んだ課題図書は「オルフェウス・プロセス(Leadership ensemble)」(*1)という、オルフェウス室内管弦楽団の創立30周年を記念して出版された書籍であった。指揮者のいないオーケストラの運営方法がマルチリーダーシップという概念で論じられていたことを覚えている。その後、リーダーシップはWINE研のメインテーマとなってさまざまなリーダーシップ論を読破していくのであるが、そのことはさておき、この本を読んだ翌年にオルフェウス室内管弦楽団が来日し、この機会に海老澤栄一先生と私夫婦とで演奏会を聴きくためサントリーホールに行ったことを思い出す。曲目ごとにコンサートマスターが交代し、指揮者がいなくてもみごとなアンサンブルで聴衆を魅了したハーモニーが今でも記憶の奥から響いてくる。

 その後、2006年からWINE研主催のシンポジウムが毎年開催されるようになり、今回が10回目ではないかと思う。始めたばかりのころは休憩時間にCDBGMを流していたのが、いつからかそれが生演奏に進化(?)した。そしてついに海老澤先生と小川さんと私の3人で演奏グループを結成し、今では“ザ・パラドックス”というグループ名を認知していただけるまでになった。シンポジウムのあと懇親会での演奏が恒例になりつつある。このようにWINE研にはいつも音楽が付きもので、シンポジウムに参加した皆さんに少しでも楽しんでいただければと思う。

“ザ・パラドックスはハーモニカとギターとバイオリンの組み合わせで、世界中を探してもおそらく平塚にしかない珍しいアンサンブルではないかと思う。演奏曲目が決まるとハーモニカの旋律にバイオリンの伴奏とギターのコード進行を重ねてこのグループ専用の楽譜を作り、合奏の練習はほとんどできないから個人練習の成果をぶっつけ本番となる。よい演奏になることもあれば失敗することもある。反省はするけれどすぐに前を向いて新しい可能性を探る。これからもケイパブルな心で進化したいと思う。

演奏はいつもパラドクスに満ち溢れていて、これがグループ名の由来となっているらしい。いまQLTで読んでいる「パラドクスだらけの生命」(*2)という本の刺激も受けて、 “ザ・パラドックス”のパラドクス的アンサンブルを大いに楽しもうと思う。今回シンポジウムのサブテーマとなっている「ひらめきの共鳴」に繋がることを願って。

 

(*1)「オルフェウス・プロセス」[Leadership Ensemble]

−指揮者のいないオーケストラに学ぶマルチ・リーダーシップ・マネジメント−

    セイフター、ハーヴェイ、エコノミー、ピーター【著】、鈴木主悦【訳】、角川書店200211

(*2)「パラドクスだらけの生命」−DNA分子から人間社会まで−

 アンドレアス・ワグナー【著】、松浦俊輔【訳】、青土社20103